ヴァイオリン科
楽器をお勧めするにあたり
宝塚ミュージックリサーチも開業12年目に入り、当初からの受講科目のヴァイオリンも生徒さんの腕の向上も著しく、お求めになられた楽器につきましても近年はかなり高いグレードの楽器を選ばれるようになって来ました。
ここ10年の間に本来ピアノ屋である私自身も、ヴァイオリンについて勉強をさせて頂きました。工業生産品であるピアノと違い、弦楽器は、1本ずつ音色が違い、値段によってもかなりの差があります。
そのため、お勧めの仕方としては、私の方から、「この楽器がおすすめですよ、これになさい!」というのはいたしません。生徒さんの予算、ニーズをお聞きして、問屋より、5、6本ご用意の上、先生と一緒に選んで頂く方法をとっております。
お店に行かれて、お店の売りたい楽器を買わされる事はなく、ご自分の先生に選んでもらえるのであれば安心も出来ると思います。そのためにも私の方は、信頼出来る業者さんを見つける事が大事になります。それらの業者さんを通してお求め下さい。
5年間、分数ヴァイオリンをレンタルされていますと、かなりお買い得になります。大人用のフルサイズを選ばれる時には、良い買い物をなさって下さい。
Cremona(クレモナ)
北イタリア・ロンバルディア州にある小さな町。ここでは多くのヴァイオリン製作家が自分の工房を開き日夜製作に励んでいます。その歴史は長く、1700年代にはストラディヴァリやガルネリといった有名な製作家を生み出しています。
クレモナでは工業的に機械や分業で製作することを禁じています。よってクレモナの作品は、材の選定からニスを塗る仕上げまですべて一人の職人により行われています。その方法が楽器製作にとって最良であることは言うまでもありません。
弾き込む程に深い味わいを増すクレモナの芸術作品を一生のパートナーにしてみませんか。
まず最初はイタリアの楽器から。
先にも書きましたが、生徒さんの腕の向上にともない、楽器そのもののクオリティも高くなってきております。
古い、オールド、モダンヴァイオリンは別として、現在の最高の位置におかれているのが、イタリア新作物 になります。今までに数名の方にお使い頂いておりますが、工芸品ともいえるヴァイオリンです。
もし、新しくヴァイオリンのお求めをお考えで、70万円の予算でドイツ製の楽器をお考えでしたら私の方からストップをかけます。他にも選択の余地があります。イタリア工房製の楽器に手が届いてきます。
それでは全てのイタリア製が良いのか?といえば、そうでもありません。ドイツ、東欧製でも安くて良い楽器はたくさん存在します。
ここで3名の現代の名工を上げておきます。あえて、ジオ・バッタ・モラッシ(Gio Batta Morassi)とフランチェスコ・ビソロッティ(Francesco Bissolotti)は外します。
Stefano Conia(ステファノ・コニア)
1946年ハンガリーにて生まれる。
クレモナの国立ヴァイオリン製作学校で Pietro Sgarabotto、Gio Batta Morassi、Francesco Bisolotti に師事。1972年に卒業した。
Stradivari、Guarneri、Amati等、古典派の型と独自の型を使用している。GB Morassi 派の特徴(ニスは赤か赤茶)を持つ。彼はイタリアの木(田園のカエデや、Val di Fiemmeのもみ材等)を好んで用いる。
1971年と1973年にクレモナビエンナーレに於いて金賞を受賞し、1972年、1974年、1976年とBagnacavalloの国内コンクールでの金賞受賞、その他の賞も受賞している。
また、母校にて教鞭を執り、後進の指導にもあたっている。
作風はクレモナスタイル、イタリアン・ヴァイオリンの王道と言うべき伝統に則ったもので、端正な造形の中に力強い個性を感じさせる。現在、現役で活躍する現代最高の巨匠の一人。
なお、同名の息子もヴァイオリン製作者。
Fabrizio Portanti(ファブリツィオ・ポルタンティ)
1963年生まれ。
1981年クレモナヴァイオリン製作学校を卒業。5年間、Morassiに師事する。そこで自分のスキルを完成させる。
自分の研究室で調合した特別なワニスを用いて古典的なクレモネーゼヴァイオリン作りの伝統に従いヴァイオリン、ビオラとチェロを製作。
1991年にクレモナの第6回国際トリエンナーレでヴァイオリン製作部門 銀賞。1994年モスクワチャイコフスキー国際コンクールでは金賞を受賞。
国内外で、数々の賞を受賞し現在に至る。
鳴りを良くするため板厚の薄いヴァイオリンが多い中、しっかりとした板厚のある楽器です。
長年かけて鳴らしこめば、素晴らしい楽器になって行くと思います。おすすめです。
Simeone Morassi(シメオネ・モラッシ)
クレモナでジオ・バッタ・モラッシ(Gio Batta Morassi)氏の名を知らない人はいないでしょう。
その長男として1966年に生まれたのが、Simeone Morassi氏です。
幼少時より父の工房で木工細工に親しんだSimeone氏は、楽器製作だけでなく演奏に関しても英才教育を施され、1984年には、クレモナ国際弦楽器製作学校を卒業すると同時にウーディネの音楽学校のディプロマも取得する。
彼は数々の国際的な弦楽器製作コンクールで優勝、入賞。圧巻なのは1996年のポーランド・ヴィエニアフスキー国際ヴァイオリン製作コンクールにおけるグランプリの受賞。
以降、イタリアを代表する製作家として世界にその名を知られ、近年では多くの国際コンクールの審査員を務めている。
最近は、父親のジオ・バッタ・モラッシ氏の楽器よりも良いといううわさですよ。
Dario Michielon(ダリオ・ミキエロン)
1973年、ヴェネツィア西部トレヴィーゾに生まれる。
1992年、ヴェネツィアのB.Marcello音楽院に入学。コントラバスを専攻する。2001年 ミラノ市立ヴァイオリン製作学校に入学。
製作をルカ・プリモン、ニスの塗装技術をマルコ イーメル ピッチノッティに師事する。
2005年より、ミラノ市立ヴァイオリン製作学校を卒業後、腕を乞われルカ・プリモンの工房で3年間アシスタントとして働く。
ルカ・プリモンの工房で研鑽を積むかたわら、修復技術の知識をより深めるためG・Rabut、C・Arcieri、H・Nebel など世界トップクラスの修復家のワークショップにも通う。製作コンクールにも積極的に参加。
2007年イタリア国内製作コンクールではヴァイオリン部門で3位に入賞する。
現在はクレモナの大聖堂の脇に工房を構える。
長年プリモンのアシスタントを務めた彼は、師匠譲りの繊細な作風を持っており、近年はそれに加えてオリジナリティーのあるデザインで製作者仲間からも絶賛されています。